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8. アブチラガマ | 太平洋戦争の足跡と平和への祈り

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【アブチラガマの概要】

アブチラガマは、沖縄県南城市玉城にある全長約270メートルの自然洞窟です。沖縄戦時には、糸数集落の避難壕として使用され、その後、日本軍の陣地壕や倉庫、南風原陸軍病院の分室として利用されました。壕内には、軍医、看護婦、ひめゆり学徒隊が配属され、約600人以上の負傷兵が収容されていました。戦後、壕内で亡くなった方々の遺骨が収集され、慰霊碑が建立されています。

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【「アブチラガマ」という名前の由来】

「アブチラガマ」という名称は、沖縄の自然地形と方言に由来しています。「アブ」は深く落ち込んだ縦穴、「チラ」は崖、「ガマ」は洞窟を意味します。つまり、崖に開いた縦穴状の洞窟という特徴的な地形を表した呼び名です。この自然壕は、沖縄戦の末期において日本軍の陣地や病院、そして住民の避難所として活用され、命を守る場であると同時に、戦争の悲劇を刻む場所となりました。

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【軍の指揮と命令が交錯した壕の実態】

アブチラガマにおける日本軍の主な役割は、壕を防衛拠点として活用することでした。壕内は自然の地形を生かして陣地化され、弾薬や食料、医療器具などの物資が保管され、兵士たちの待機場所や指揮拠点として機能していました。軍は壕内での秩序維持にも関与し、住民や学徒、看護婦に対して命令を出すなど、生活や行動を制限する場面もあったとされます。さらに、戦局が不利になると、重傷者を壕に残しての撤退や自決の促しなど、過酷な判断も下されました。アブチラガマは、日本軍の組織行動と戦争末期の極限状況を象徴する場所となっています。

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【学徒と看護婦が支えた壕内の医療現場】

アブチラガマにおける病院(南風原陸軍病院分室)の役割は、戦時下での負傷兵の治療・看護を担う重要な拠点でした。1945年5月以降、正式に分室として指定され、壕内には約600名以上の負傷兵が収容されました。壕内では、医師や看護婦、ひめゆり学徒隊が照明や医薬品も乏しい中で手術・看護にあたり、麻酔のない処置も日常的に行われていました。極限状態の中、医療従事者や学徒たちは命を支える最前線に立ち続けていたのです。

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【戦場となった避難所での静かな闘い】

避難した住民たちは、戦火を逃れ、家族連れや高齢者、子どもたちと共に壕内での生活を強いられました。光の届かない暗闇の中、井戸や小川の水を頼りに飲み水を確保し、窯を使ってわずかな食料を調理しながら日々をしのいでいました。水汲みや炊事、幼児の世話は交代で行われ、壕の外に出ることは命がけ。また、軍の指示で看護や物資の運搬を手伝うこともあり、戦争の最中に「生きる」「暮らす」こと自体が極限の行為となっていました。壕内には、当時の生活の痕跡が今も静かに残されています。

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【静かに語りかける慰霊の場】

アブチラガマの出口近くには、戦争で命を落とした方々の霊を慰める慰霊碑が静かに建てられています。壕内で亡くなった兵士や住民の遺骨が集められて安置されており、今も多くの来訪者が千羽鶴や花を手向けて祈りを捧げています。この場所は、単なる石碑ではなく、過去と向き合う“記憶の場”として大切にされています。毎年6月23日の「慰霊の日」には、地元糸数区の住民や関係者が集まり、戦没者の冥福と恒久平和を願う慰霊祭が厳かに執り行われます。

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【平和を学び、受け継ぐ場所として】

アブチラガマは現在、沖縄戦の実相を学ぶ「平和学習の場」として多くの人々に活用されています。見学は専属ガイドの案内付きで行われ、壕内に残る遺物や空間から、当時の過酷な状況を体感的に学ぶことができます。修学旅行や平和学習で訪れる団体も多く、教材では得られない「気づき」の機会となっています。また、語り部や体験者の証言を記録・共有する活動も進められており、戦争体験の継承と地域ぐるみの平和発信の場として、今なお大切に守られています。

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【糸数アブチラガマ案内センター】

アブチラガマ(糸数壕)に隣接する「糸数アブチラガマ案内センター(旧・南部観光総合案内センター)」は、沖縄戦の歴史を学ぶ拠点として、見学者の受付やガイド手配、関連資料の展示・販売などを行っています。館内には沖縄戦に関するパネル展示や書籍、証言集などの閲覧コーナーがあり、壕内に入る前に学びを深めることができます。このセンターは、戦争の記憶を次世代に伝える平和学習の場として、多くの人々に利用されています。

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【アクセス情報】

【車】 那覇空港から約40分 那覇バスターミナルから約60分 【バス】 那覇バスターミナルから:市外線51・53系統バスで約60分 最寄りのバス停:「糸数入口」バス停下車、徒歩約10分

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