ガンガラーの谷 | 沖縄の聖地・秘境巡り
【ガンガラーの谷の概要】
ガンガラーの谷は、沖縄本島南部・南城市に位置し、巨大な鍾乳洞が崩壊してできた谷間に広がる、約14,500坪にも及ぶ自然豊かなエリアです。この谷が特別である理由は、「自然」「古代人」「祈り」という三つの要素が深く結びついている点にあります。古代のロマンという点では、約2万年前の人類である「港川人」の居住区であった可能性があり、現在も発掘調査が継続されています。これまでに、世界最古となる約2万3千年前の釣り針が発見された遺跡でもあり、日本のルーツに迫る、古代のロマンに満ちた場所と言えるでしょう。また、豊かな自然としては、亜熱帯の植物が鬱蒼と生い茂り、異様な地形に多様な樹木が根を張る様子は、まさに「異世界」です。なお、ガンガラーの谷は、その貴重な自然と学術的価値を守るため、予約制のガイドツアー参加者のみが入場できます。専門ガイドと共に約1kmのコースを約1時間20分かけて巡り、この谷の持つ歴史と神秘を深く知ることができるのです。
【神秘の森への入口ケイブカフェ(CAVE CAFE)】
ガイドツアーのスタート地点には、「ケイブカフェ(CAVE CAFE)」と呼ばれる天然の鍾乳洞をそのまま利用したカフェスペースがあります。広場から坂を下ると突如現れるこの洞窟は、隔絶された森への出発地点であり、天然のラウンジとして、出発までの時間を有意義に過ごす空間です。ここはツアー参加者が日常的な思考から離れ、心を谷に同調させて整えるための空間という当初の設計を重視しており、現在はガイドツアー参加者のみ利用可能となっています。鍾乳洞という神秘的な空間を利用して、洞窟夜間コンサートや貸切パーティーなど、各種イベントも開催されることがあります。
【命の神秘を辿るイナグ洞】
ガンガラーの谷には、古くから人々が命の誕生と成長を願ってきた、二つの神聖な洞窟が点在しています。 まず、「イナグ洞」の「イナグ」は沖縄の方言で「女性」を意味し、「女性の洞窟」とされています。民間信仰の場所として女性の神が宿るとされており、良縁や安産への祈りが捧げられてきました。洞窟の中に入ることはできませんが、ガイドの説明によると、内部には女性の乳房や臀部の形をした鍾乳石があるそうです。久米島や宮古島など離島からも、昔から拝みに来る人がいるほど神聖な場所なのです。
【命の誕生を願うイキガ洞】
一方、「イキガ洞」の「イキガ」は沖縄の方言で「男性」を意味し、「男性の洞窟」とされています。ここでは、命の誕生・成長や子宝が願われてきました。ツアーでは、深い洞窟の入り口からランタンを持って歩き、中には川が流れ、勢いよく水が流れ込む音が響いています。ランタンの光に照らされた先には、子孫繁栄に御利益があるといわれる、ご神体と呼ばれる大きな鍾乳石があります。このイキガ洞から出ていく際に見られる、奇妙な洞窟の天井と森の緑とのコントラストは目まぐるしく変化し、印象的で人気スポットの一つです。
【地形の痕跡と古代のロマン大岩】
谷のコースを進むと、数十万年の歴史を物語るダイナミックな地形に出会えます。コースの途中で目にする大岩は、数十万年前に鍾乳洞が崩落してできた谷の歴史を物語る、荒々しい岩肌を見ることができます。ゴツゴツと尖った岩はもともと鍾乳石であったことから、かつてここが鍾乳洞だったことがわかります。また、古代の姿がよく分かる岩壁には、横に入った線が見られますが、これは大昔にここに川が流れていたときにできた跡だそうです。これらの岩壁は、地形学を学び、ガンガラーの谷プロデューサーとして従事する高橋巧でさえ理解を超えた景観だと述べるほどの、ダイナミックな地形の変化を感じさせる場所です。
【森の長老大主ガジュマル】
ガンガラーの谷で一番人気のスポットは、圧倒的な存在感を放つガジュマルの木です。 大主(ウフシュ)ガジュマルは、谷の主ともいえるような存在感を放ち、その高さは約20メートルに達し、推定樹齢は150歳ともいわれています。県内のガジュマルの中でも、ここまで高さのある木は唯一のものと考えられています。ガイドツアーのコースでは、「森の賢者」と呼ばれており、自然と背筋が伸びるような神聖な空気が漂っています。その圧倒的なオーラは、まるで森の長老のようです。このガジュマルの高さのほとんどは、上に伸びた幹ではなく、崖の上から垂れ下がって成長していった巨大な根(気根)によって形成されているのが特徴的です。
【港川人の足跡を辿る樹上の展望台「ツリーテラス」】
ツリーテラスは谷筋を見渡すことができる、樹上に設置された手作りの展望台です。秘密基地のような雰囲気がある場所で、しっかり頑丈に作られており、吹き抜ける風が心地よく、景色を眺めながら一息つくことができます。テラスからは谷筋の先を望むことができ、古代の港川人の骨が発見された港川フィッシャー遺跡も見えます。古代人がこの森の中を歩き回り、狩りをして生活していたであろうロマンに思いを馳せられる場所です。
【日本人のルーツに迫る約3千年前のロマンが眠る武芸洞】
武芸洞はツアーの終着地点であり、古代人の痕跡が残る重要な遺跡です。この洞窟では、約3千年前の石棺と埋葬された人骨が発見されています。また、約7000年前の土器や化石など、数多くの遺物も発掘されました。これらの発見から、武芸洞が古代人の生活の拠点として利用されていたことが明らかになっています。古代人の左腕の骨には、貝のビーズのブレスレットが付けられていたというロマンあふれる情報も残されており、現在も古代人の生活の手がかりを得るための発掘調査が続けられています。ガイドが日本人のルーツの謎について解説してくれる、学術的にも非常に価値の高い場所です。
【ガジュマルの生命力と時の流れ】
ガンガラーの谷には、生命の神秘と時の流れを感じさせるガジュマルにまつわる話が二つあります。一つ目は、高さ約20メートル、推定樹齢150年とされる「大主(ウフシュ)ガジュマル」です。森の長老や賢者と呼ばれ、その圧倒的な大きさは、まるで語り始めた森の賢者のようです。崖の上から垂れ下がった根が成長した姿は、神聖な空気をまとっています。二つ目は、ツアーコースの序盤にある「歩くガジュマル」と呼ばれる木です。これは、ガジュマルが気根を伸ばし、長い年月をかけて少しずつ移動していくという、生命力に満ちた特異な性質を示しています。亜熱帯の森に息づく多種多様な植物の中でも、特に目を引く存在です。